M1 Macの性能の秘密

M1 Macの性能の秘密

2020年12月24日


M1 Mac の性能の秘密

前回の記事で M1 Mac は Firebase などを使った Web 開発を含む殆どのユーザーの用途には8 GB メモリ・256 GB SSD で十分利用可能という事を書きました。もちろん、メモリが16 GB のモデルや、SSD の容量が256 GB より大きなモデルを販売している以上、そうしたモデルが必要になる使い方はあります。

今日は、M1 Mac の購入を考えている方の参考にどのモデルを選ぶのかの考え方を書いてみました。

今まで使っていた PC は?

残念ながら最近のインテルベースの Mac は使っていませんでした。したがってこの記事では現行のインテルベースの Mac との比較はしていません。ただし、インターネットを検索して頂けば分かると思いますが、コンピュータの性能を測るテスト(ベンチマークと言います)の結果を見ると、M1 Mac は、現行の MacBook Pro の高性能 CPU を搭載したモデルと同等かそれ以上の性能が出ているということは書いておきます。

話を元に戻して、私が使用している PC は Windows10 の PC 3台でした。

  • Intel Core i3-4005U(第4世代)8 GB メモリ・512 GB SSD(2015 年に購入) (*)ラップトップ
  • Intel Pentinum G3258 2GB メモリ・512 GB SSD (2015 年に購入)(*)デスクトップ
  • Intel Core i5-10400(第10世代)16 GB メモリ・512 GB SSD(2020 年に購入)(*)デスクトップ

の3台です。 Core i3 のラップトップを主に Web 開発用として使用していました。Peninum G3258 のデスクトップは主にビデオ編集様です。

性能の話は別として、Firebase を使った Web 開発や Java や Python を使ったデスクトップアプリの開発では、5 年前の Core i3 のラップトップでも解く問題はありませんでした。高画質の写真(24 M ピクセルのセンサーのカメラで撮影)した RAW 画像の処理も問題なくできました。

元々は、ハードディスクドライブを使っていましたが、ディスクアクセス時に異音がするようになったので、壊れる前にデータを移動して、SSD に交換しました。サイズ的には128 GB で十分だったのですが、SSD の価格差が数10ドルだけだったので、大きめの512 GB の SSD を入れています。

コンピュータの性能の3つの要素

コンピュータの性能を決める3つの大きな要素は、

  • CPU の処理性能
  • メモリアクセスの性能
  • IO アクセスの性能

です。他にも細かく分けるとありますが、この3つが大きな要素になります。これはどちらかというとコンピュターのハードウエアで大きく変わってくる要素です。これに加えてソフトウエア、特に OS(Windows や Linix、MacOS など)も性能を決める要素になります。これは、OS がいかに上手くコンピュータのハードウエアを使いこなせるかが変わってくるからです。 こうした、性能を比較するために、性能を測るプログラムがあります。これが「ベンチマーク」と呼ばれるプログラムでプログラムを実行すると数値(スコア)が出てきます。数値が良いものが「高性能」ということになります。

使った感覚は違う場合がある

ところが、こうしたベンチマークの数値と実際にコンピュータを使った場合で「ズレ」がある場合があります。 多くの人が「速い」と感じるのは、電源を入れたあと素早く OS が起動するとか、アイコンをクリックするとアプリが即座に立ち上がるという事が「速い」と思う場合が殆どだからです。

具体的に例を上げると、私が使っていた 5 年前のラップトップは元々ハードディスクドライブを使用していました。したがって、Windows が立ち上がるのには、最新のコンピュータと比べると明らかに時間がかかっていました。ところが、これを SSD に変えると、OS が立ち上がるまでの時間は最新のコンピュータと比べてもあまり差がないように感じられるようになりました。(実際は差が少ないだけで、最新の PC の方が速いのが事実です。)これは、同じ CPU でも、高速でデータにアクセスできる SSD を使ったことが大きな理由で、Windows が立ち上がるまでの時間は、CPU の処理時間より、Windows のデータを読み込む時間の方が大きな要素というのが理由です。

古い PC でも、ハードディスクを SSD に変えるだけで、高速になった様に感じるので用途によってはこれだけで十分な「アップグレード」になります。

しかし、見かけは早くなっていますが、実際にデータの処理をすると差は歴然としています。例えば、このラップトップと、最新のインテルの Core i5 の第10世代の CPU を使ったデスクトップでビデオの編集などをやると、処理時間には大きな差があります。これは、単にデータの読み書きではなく、CPU が実際にデータを処理するため、「CPU の性能」が大きく効いてくるためです。

必要な PC を考える

では、どんな PC が必要かを考えてみます。 まず、今まで PC を全く持っていない人は、とりあえず基準がありませんので、目的が Web 開発でしたらシンプルに M1 Mac を選ぶのであれば、8 GB メモリ/256 GB SSD のモデルで良いと思います。これで、一通りの作業は可能ですし、必要ならば、画像(写真など)の編集や、4 K ビデオの編集も十分にできます。あとは、本当に必要になった時点でハイスペックの PC の購入を検討すれば良いかと思います。

現在、既に PC を持っていて使用されている方は、現在使用している PC の使用状況をみたり、使い方を考えてみてください。まずは、必要なアプリで使用しているサイズはどれ位かを考えます。アプリのサイズは同じアプリならば Mac でも Windows でもサイズはあまり変わらないかと思います。 手っ取り早いのは、現在使用しているディスクの容量をチェックしてみてください。 スペースが大きいと無駄なデータを置いているケースもあるかと思いますが、まずは現在の使用量が基準になります。私の場合は、512 GB の SSD を使用していますが、実際の使用容量は精々150 GB 程度です。若干無駄なデーターや殆ど使用しないアプリも入っています。

メモリは、現在使用している PC のメモリサイズが一つの基準になります。少なくても、現在の PC で8 GB のメモリで作業していて問題がなければ8 GB メモリのモデルでまず問題にならないと思います。 問題は、現在16 GB などの場合、8 GB メモリのモデルで大丈夫か?という疑問は必ずついて回ります。

メモリは OS で大きく変わる

私が、M1 Mac を使った感想ですが、8 GB のメモリで意外に大丈夫という事です。実際に、OS を立ち上げて、Google Chrome を立ち上げるだけで、5 GB 前後のメモリを既に使用しています。これで、負荷の高い画像編集やビデオ編集を行うと、メモリが足りなくなるのではという話です。

私は、8 K のビデオを取れるカメラを持っていませんので、8 K のビデオ編集は実際には行っていません。しかし、4 K のビデオを数分間撮影して編集を行ってみました。こうした作業は通常は最新のデスクトップのインテルの Core i5 を使った、16 GB メモリの PC で作業をしています。実際は、8 GB の M1 Mac の方が高速で処理ができました。

勿論、ビデオ編集を中心に利用される場合は、恐らく16 GB のモデルを購入された方が快適に作業ができると思います。さらに言えば、Apple は 2020 年の発表では、ローエンドのモデルを M 1に置き換えただけですので、2021年以降ハイエンドのモデルに ARM ベースの CPU を投入してくるのは確実です。そう考えると、そうした高性能のモデルが出るまで待った方が良いのではないかと思います。当然値段は高くなると思いますが更なる高性能が期待できます。

この記事では、主な使用用途が Firebase などを使った Web 開発や一般的なデスクトップアプリの開発に PC を使う人を対象に考えています。こうした用途が中心で時々、簡単なビデオ編集などをする場合は、8 GB メモリのモデルでも十分対応可能だと考えます。

Mac OS は上手くハードウエアを使っている

前回の記事でも簡単に触れていますが、Mac OS は実に上手く Mac のハードウエアを使いこなしていると思います。 ハードウエア、例えるなら「道具」です。同じ道具でも、使う人によってその結果は大きく変わります。野球でプロ野球の選手が使っているバットを使えば誰でもホームランを打てるわけではありませんし、マラソンでオリンピック選手が履いているシューズを履けば速く走れるわけではありません。

メモリも同じで、同じ8 GB のメモリでも、上手に与えられたメモリスペースを使えれば効率よくデータの処理ができますが、上手く使えなければ処理の効率は落ちます。 前回の記事では、メモリのスペースを台所のテーブルに例えました。狭いテーブルでも作業に必要な物を上手くテーブルに持ってきて作業すれば、必ずしも広いテーブルは必要ないという話を書いています。 Apple の設計した M1 チップは、キッチンを上手く設計したと考えるとわかりやすいかと思います。道具(データ)を取り出しやすくしたりして、テーブルだけでなくキッチンを使いやすく作っています。

さらに、OS はキッチンを使うためのマネージャー(アシスタント)として、キッチンの作りを良く理解した上で、効率よく料理に使う道具(データ)を取り出してテーブルに準備する工夫もされています。新しい MacOS(BigSur)はこうした、新しい M1 チップに対応した処理を上手くできるようにしていると考えられます。

この、キッチン(M1 チップ)とマネージャー(OS)が上手く機能することで、従来は8 GB では難しかった処理を効率よく実行できるようにしていると言えます。

Apple は自分で全部提供している

Apple の強みは、この M 1チップからは、Apple が全て提供しているという事です。こうすることで、良いキッチンを設計して、そのキッチンを使いこなす人の教育や養成も行っています。これが、キッチンを作るところと、人材を作るところが別になると、なかなか「完全に使いこなす」のが難しくなるなります。

今までは、キッチンの一部をインテルから買って、その他の必要な物を集めてキッチンとその人材を Apple が作っていた感じでしたが、M1 からはキッチンの主要部分を Apple で作ることになったのでこうした最適化が可能になったと言えます。

ARM の CPU が速いわけではない!

ところで、誤解がないように書いておきますが、M1 の性能は素晴らしいのですが、これは ARM の CPU が特別に速いわけではありません。Apple が設計した M1 が素晴らしいという事です。 ARM 自体は基本的な仕様、命令セットと言いますが、CPU が行う処理をするための命令(足し算するとか、メモリからデータを読み込むなど)を決めているだけです。その処理をどの様に作るかは実際の設計次第という事です。前の例のキッチンに例えるならば、キッチンにはコンロがあるなどです。でも、どのコンロを実際にキッチンに入れるかはキッチンを作る業者が決めますよね?それと似ています。

なので、Apple が作る ARM のチップと、サムソンが作る ARM のチップでは当然性能が変わってきます。

まとめ

この記事では、M1 Mac の購入を検討する方の参考になるように、M1 の Mac の高性能の秘密を簡単に解説してみました。

M1 は、ハードウエアからソフトウエアまでをアップルで行うことで、データ処理に必要なリソースを上手く使いこなせるようにして、高性能を実現しています。従って、今までより少ないリソース(少ないメモリ)でも高速でデータを処理することができるようになっているようです。

Firebase などを使った Web 開発や、Python や Java を使ったデスクトップの開発に利用する場合には十分です。特に、8 GB メモリ/256 GB   SSD のモデルは価格も日本円で10万円を少し超える程度で Mac としてはお買い得感の強いモデルだと思います。

一応、オールランダーとして、写真や動画の編集も十分可能で、殆どの人はこのモデルで十分対応できると言えます。

ただ、動画の編集などが主な使用用途でよりハイスペックな仕様を望むのであれば、2021 年以降に発売されるであろうハイエンドのモデルを待った方が良いかと思います。当然、価格は高くなると思いますが、M1 よりさらに高性能なモデルとして発表されてると思います。

現在の、ローエンドのエントリモデルでも、十分高性能で、価格も Mac としては抑えられていると思うので現在の、開発用の PC の置き換えや新規開発用 PC を検討されている場合にはお勧めの一台だと思います。

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